毎朝同じことをする理由

同じことの中にある『変化』に気付く

 

 

「毎日決まったことをする」のが大切なのは、変化に気付く力(とそれに対応する力)をつけるためだと思っています。

 

自分がやっている『毎日決まったこと』は毎朝の臨書です。

ここ数か月のお手本は藤原佐理の詩懐紙。

詩懐紙がどんな作品なのかはこちらを参照。

藤原佐理/詩懐紙の臨書(原文・意訳あり)

 

毎朝同じ道具を使って同じ言葉を同じ大きさで書くわけですが、まったく同じ濃さの墨は磨れないし、気温湿度で和紙の滲み具合も毎日変わります。

 

ここ最近は梅雨も近いからかずいぶん湿度が高く、濃いめの墨を磨っても滲みます。

その場合はより濃い墨を磨ったり、筆に含ませる墨を少なくして運筆を早くしたりしながら、過度な滲みを防ぐ方法を考えます。

 

同じ道具を使って同じ言葉を書くといっても、その環境・条件は常に流動的。

どんな『変化』が起きているのかをまず把握することを意識しています。

 

 

同じことの中で『差分』に気付く

 

自分の体調も毎日違う。

また、願わくば過去よりも上達していたい。

 

しかしながら、誰の目にもわかるような顕著な成長なんてほとんどありません。前日より上手く書ける部分もあれば、上手くいかない部分もある。

『3歩進んで2歩戻る』的な成長曲線の中で、現時点の自分がどこにいるかを把握するために、毎日の同じ動作の中で生じる『差分』を把握していきます。

 

 

環境の変化と今までとの差分に気付くこと。

そのうえで、今できるベストを書く訓練。

それが毎日同じことをする理由だと思っています。

 

 

環境の変化と差分を前提に、ベストを書く

 

 

一発勝負の揮毫(いわゆる書道パフォーマンスなど)は、環境や道具がまったく同じ条件ということはまずありません。

その場で「違い」に対応していかなければいけない。

それは、毎日変化する環境で書に向き合うことと本質的には同じです。

 

書くことは常にシミュレーションであり、勝負です。

 

小杉 卓

 

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