書、言葉がつくる「余白」
書道のインテリアとしての価値は、その空間に『余白』を作れることだと思います。
「作品自体の余白」と「言葉の余白」によって、空間に緩急と濃淡が生まれます。
緩急は時間の流れ。濃淡は空間の密度の変化です。
落ち着いた流れも、あるいは衝動的な空気を作ることもできる。
そして、何も書かれていないところにこそ深い思慮の余地があります。
軽井沢でデザインした『春夏秋冬』
軽井沢の別荘の襖をデザインさせていただいたときの依頼は、強い意味を持たない言葉を、絵画のように書いてほしいというものでした。
そこで、「自然」をテーマにして書き上げた枕草子の春夏秋冬。
それぞれの季節を連想させる色彩を言葉にのせて、日本画用の顔彩で一気に書き上げました。
『春』
春はあけぼの…
『夏』
夏は夜…
『秋』
秋は夕暮れ…
『冬』
冬はつとめて…
季節に合わせて空間を彩る
こちらの襖は押し入れの扉ではなく、部屋と部屋とを仕切る襖でした。
3枚すべて並べて四季を眺めるほかにも、滞在する季節に合わせてその季節の襖を飾ることもできます。
制作時期は紅葉真っ盛り。
1週間ほど滞在させていただきながらの制作でした。
ネットもコンビニもない空間で、自然の光で墨をすり、ひたすら自然の音を聴きました。
この1週間の時間も、大きな余白を含んだ書の時間だったと、今も時々思い出します。
小杉 卓