書展「黒と言葉」作品まとめ
2018年4月に銀座ART FOR THOUGHTにて開催した書展「黒と言葉」に出展した作品をまとめました。
今回の展示では「モノトーン」という基調の色を大きなテーマとして、言葉の奥ゆきや、筆線の多様さによる作品をそろえました。言葉の奥にある『景色』や言葉が奏でる『音』を感じていただければ幸いです。
展示コンセプト『黒と言葉』
墨は、2度と同じ表現をさせてはくれません。その磨り方を全く同じにしたところで、その日の気温や湿度が和紙のコンディションを微妙に変化させます。擦れ具合や滲み具合はそれによりほんの少しずつ、季節が移ろう様に変わってしまいます。
墨はいわば『自己』であるという比喩も、また可能ではないでしょうか。モノトーンという『基調』の色は持ちつつも、多様な表情を見せるそれは、言語や宗教、性別、哲学など、ほんの少しの違いが同じ『ヒト』のその個性を変える様に似ています。
自分はどんな色でありたいでしょうか。
何者でありたいかと、我々は感じ、考えます。『言葉』はその可能性を大きく広げてくれると同時に、限界をも感じさせてくれます。
日常のあらゆるところにしかし、言葉はあふれています。
街を歩けばその視界には何百もの広告が飛び込んできます。
テレビのワイドショーはタレントの皮肉を延々と流し続けます。
片手で持てるスマホが、あらゆる『情報』にアクセスを可能にしてくれます。
そんな言葉の海に、我々は溺れかけてはいないでしょうか。
際限のない言葉の海を見渡し、一つの言葉を深く静かに見つめ、私たちは日々言葉に向き合います。
言葉の奥にある景色を、言葉が奏でる音を、黒をもって大切に書き上げました。
作品一覧
画像をクリックすると作品ごとの解説をご覧いただけます。
また、創作作品のほかに臨書作品として
「臨 詩懐紙(藤原佐理)」と「臨 白氏詩巻(藤原行成)」を展示いたしました。
おわりに
早く、そして大量に言葉を生産し消費する今日。一つの言葉を見つめ、咀嚼し、イメージを描いていく時間は、今日においてこそ時間を豊かにしてくれるように思えます。
そして、書の作品を鑑賞する時間も、あるいは自らが筆を執る時間も、「書」という時間の一つの価値はそこにあるのではないかと僕は考えます。
言葉と想いをより豊かに表現する書というのが、私の表現の大きなテーマです。
これからも展示やパフォーマンス、そのほか様々なシーンで「書」を通して、その価値や魅力を伝えていけるよう、自らの技術・感性をしっかり磨いていきます。
■小杉 卓(書家)
1990年生まれ。祖母の書道教室で書道を始め、その後、茅島貫堂氏、鶴見和夫氏に師事。国際基督教大学(ICU)卒業後、日本マイクロソフト株式会社を経て書家として独立。東京・パリを拠点に国内外で活動。各地での展示やパフォーマンスのほかにも、オーケストラとの共演や大学での講演など、『書』を軸とした文化活動を展開する。
[過去の展示やパフォーマンス/クライアント]
ART FOR THOUGHT(銀座), L‘Autre Thé(Paris),ヴェネツィア 大学(Venezia), MAZDA France, オーケストラ Musica Promenade(東京/岩手), 株式会社八代目儀兵衛(京都), ひざつき製菓株式会社(栃木)
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