パリ管弦楽団の「ボレロ」に、魅せる演出とは何かを考えた。
すごく楽しみにしていたプログラム。特にボレロ。
ホールに向かう電車の中でも「タ~ラララララララッタララ~♪」と、ボレロのメロディーを口笛で奏でるおじいさん。もうみんなボレロ聴きに来てるんじゃないかというくらい。
ちなみにこの日のプログラムは、
パリ管弦楽団@フィルハーモニー・ド・パリ
ジョナサン・ダーリントン指揮
ドビュッシー 「牧神の午後への前奏曲」
シュミット 「サロメの悲劇」
プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」
ラヴェル 「ボレロ」
個人的には、他にもドビュッシーの「牧神ー」とプロコの「ロミジュリ」はとても楽しみだったけど、やっぱりボレロ。
それで、
演奏が始まるともうフルートのとろけるような音色にみんなメロメロ。「サロメの悲劇」は、恥ずかしながら初めて聴いた。黙劇のために作曲され、のちにバレエにも展開されている曲ということで、劇のワンシーンを想像させるような変化にとんだ華やかな演奏。
ここまでで演奏時間は1時間弱、小編映画を見たような気分だ。
休憩をはさんで「ロミオとジュリエット」。「モンタギュー家とキャピュレット家」から始まり、観客はノリノリ。曲の終わりころ、さささ~っとスネアの奏者が移動&トロンボーンが入れ替わっていて、あれ、そんな曲あったかなと思っていたら、、
曲が終わって、パチパチパチパチっ、、パチッ、、ん?
指揮者は手を下ろさない。
そして、
タッタタタ・タッタタタ・タッタッ、、、、
、、、、!
いやあやられました。
もう、お客さんがボレロを楽しみにしているのはきっとわかってて、ニクい演出です。なんだか映画のエンドロールみたいにボレロが始まった。
それにしても、
ボレロってスネア協奏曲だったんですね。スネアの奏者は指揮者の正面(フルートとオーボエの前)で演奏していました。冒頭のスネアの音は、アズキがコロコロ転がるような、いやゴマ、いやいや、水滴がポタッポタッとリズムを奏でるような細やかな音。こんな音出せるのかって。
それぞれの管楽器のソロはため息が出るほど美しい。曲の盛り上がりとともに、冒頭の演出で呆気にとられていた観客もだんだん曲に引き込まれていく。弦楽器が弓を使うころからはもうなんだかお祭りのような雰囲気に。
ボルテージが上がりきって、唐突な転調とともに、終わり。
そして大喝采。見事な演奏・演出でした。
それにしても異様な音楽だ。
こんな曲を初めて聴かされた人々は何を感じたのかな。
しかし、ボレロという曲がそれはそれは有名になった今日、いったいどんな演奏を聴かせてくれるのだろうかと観客はやってくる。演奏する側にとってもそれは大きなプレッシャーになるだろう。
そこで、この日の演奏のように、冒頭から観客の度肝を抜くような演奏に触れると、ああやられたなと、素直に感服してしまった。
今やだれもが知っている曲をどう演奏し、観客をどう楽しませるか。クラシック音楽という、ある意味テンプレート化された音楽にも、趣向を凝らすことでどんどん楽しみを加えられるように思う。そしてこの夜は、そんな演出に思わず魅せられた夜だった。