同じ時代、同じ空の下

「同じ時代、同じ空の下」

 

同じ時代、同じ空の下

 

帰宅してポストを開けたらAir mailが届いていた。
イギリスでの留学を終え、まもなく帰国する友人からだ。

部屋に入って鞄を置いて、スーパーで買ったものを整理しながら、
静かなわくわくと、ちょっとした緊張を感じる。

この時間がとても好きだ。
そしてはさみで丁寧に封を開く。

彼が留学に発つときに、友人たちと空港でサプライズ見送りをしたのが一年前。
夜風に吹かれながらスカイデッキで食べた牛丼とビールがめちゃくちゃ美味しかった。
そのとき僕は手紙と書を彼に贈った。

他国の大学院で学ぶというのは、
おそらく僕が想像する以上にワクワクすること、
そして厳しいことが多かったんじゃないかと思う。
崇高な志と現実との狭間で、キツイ時期を過ごしたこともあったんじゃないか。

手紙に記されている言葉からひしひしと伝わってくるのは、
「一年の重み」だった。

この手紙は今の彼にしか、この一年間戦い続けた彼にしか書くことはできないな、と。

曇りがちなLondonの気候と僕が贈った「雲外蒼天」の書の奇遇、
この一年で感じ取ったこと、先に見えたもの、、、
そこに紡がれた言葉には「色」があり「時間」があった。

彼がこう書いていた。
「時として焦燥感すらかきたててくれる人に出会えたことは、
どこにいても生きる糧になる。違った道を征く君はどうしているだろうか」

とても素敵な言葉だと思った。

「今このとき、あの人があの場所で」を、
どれだけ本気で感じられるかが大切なことなんだと思う。

何気ない生活の中で、よく「世界には貧しい人がいて、、、」といったニュアンスの文脈で
「今日も、誰かがどこかで、、、」が語られる。

自身も日々のニュースを見てはそう感じることが少なくないという事実に胸が痛む。

「同じ時代、同じ空の下」に生きるあの人へ。
手紙っていいな、と心から感じた初秋の夜。

追伸
観に行かれた方も多くいらっしゃるかもしれませんが、
恵比寿の東京都写真美術館で観た「世界報道写真展2014ーおなじ時代、おなじ空のしたにー」が作品の着想になっています。

「横と縦」をクロスさせることで時間や場所を共有しているイメージを。
さらに、その2軸にもう一つの軸となる感情や思いのような「深み」を加えたく、
淡墨を使いました。

可能な限りフレーム(境界)を感じさせないように、
空気のように、
時間のように。

海京