ALM Records(コジマ録音)よりリリースされる打楽器奏者・上野信一さんのCDアルバムにて、ジャケットデザインの書を担当させていただきました。

収録されているのは、日本を代表する作曲家・新実徳英先生の打楽器作品の楽曲群です。
- 「風神・雷神」(大太鼓版 初録音)
- 「素数は踊る」(世界初録音)
- 「荒地」(世界初録音)
打楽器が放つ研ぎ澄まされた打音、そしてその前後に広がる深遠な静寂。制作にあたっては、その圧倒的な音の響きを全身で浴び、さらに「荒地」のインスピレーションの源となったT.S.エリオットの詩篇『荒地』を深く読み解きながら、一筋の線を模索していきました。

可読性と抽象性の狭間をめぐる挑戦
揮毫にあたり、上野さんからいただいたのは「絵画的に」という言葉でした。
文字としての「読める」という枠組みを保ちながら、いかに打楽器の持つ音響のダイナミズムや、詩が宿す感情の抽象性へと迫れるか。書という表現の境界線をどこまで押し広げられるのか——それは私自身にとっても大きな挑戦でした。
表現したいと感じる「美しい何か」は、いつも朧げながら、どこか遠くに見えています。 けれどそれは、すでに自分の中にあるものではなく、常に「自分の外側」に存在しているのだと感じます。
捨て身の一歩を踏み込んで、初めて届く場所

「うまく書ける」と分かっている安全な場所にどっしりと腰を据えたままでは、どれだけ筆を重ねても、自分の内側にある予定調和なイメージの枠を超えることはできません。
自分の外側にある本物の美しさに手を伸ばそうとするならば、ときにこれまでの自分を捨て身にし、ぐっと未知の領域へと一歩を踏み込まなければならない。
リスクを引き受けて踏み込んでこそ、初めて届く線がある。 今回の揮毫は、まさにそんな切実な身体感覚を伴う、濃密な時間となりました。
研ぎ澄まされた打楽器の響きと余白の美、その圧倒的な世界観が凝縮された一枚です。 音楽と言葉、そして書が共鳴するこの作品を、ぜひ多くの方にお手に取っていただけたら幸いです。

アルバム情報
- タイトル:『上野信一 新実徳英 打楽器作品の真髄』
- レーベル: ALM Records(コジマ録音)
- 発売日: 2026年10月7日 リリース予定
小杉 卓
こんな記事も書いています