桜(2013年2月14日)

僕にとって桜には2つのイメージがある。

ひとつは花、ひらひら。
春、空気に漂う桜花の美しさは言わずもがな。

舞っている桜を表現。

もう一つは冬の桜木。

小学生のころだったか中学生のころだったか、
国語の時間にこんな話に出会った。

志村ふくみさん(染物屋)と大岡信さん(評論家)の話。
「綺麗な桜色に染まった着物を見せてもらった。
『桜』で染めたというから、当然私(大岡信)は、
その染物は桜の花から染めたものだと思った。
しかし話を聞いてみるとどうも違うようだ。」

志村ふくみさん曰く「この色はね、春に花が開く直前の桜の木の幹からとったものなんですよ。
一年間、エネルギーをいっぱいにため込んで、今まさに開こうとしている、
そのときにしかこの色は出ないんです」とのこと。

その話を読んでから、
僕には、花開く前の桜の木が赤みがかって見えるようになった。

実際に赤く色づいているのか、
僕の頭が勝手なイメージにとらわれているのか、
どちらかは分からないけれど。

ごつごつした黒い幹の奥に、
ツンとつつくと、とめどなく何かが溢れ出るような、
そんなあやうさを感じる。

綺麗だなと思う。

この作品は、木の板に書きました。
こうして木も、ちゃんと答えてくれるんだなという実感。