「うちの会社においで」とは言ってもらえなかった。でも、もっと嬉しいことを言ってくれた。

会社に入って2年目のころ、転職を考えたことがあった。

2年目という時期は会社員のキャリアとしては多くの場合において、決して高く評価されるものではないということは重々承知していたし、正直なところ、「これをやりきった」とか「これができる」という自信はまだまだ皆無に等しかった。でも、うまくそのチームにフィットできないなと感じる場面もあったし、自分がうまくいっていない時期ってたいてい周りの環境がまぶしく見える。

そんな気持ちを(他社の)先輩に相談に行った。

その先輩とは歳こそ一回り以上離れているけれど、会社に入る前にも進路について相談に乗っていただいたこともあり、会社での業務のほかに自分がどんな想いをもって書道に取り組んでいるかということを、焼き肉を食べながら静かに聞いてくれた。

「じゃあうちの会社においでよ」なんて、言ってくれたらうれしいななんて本当に甘えた考えをしていたことを白状します。はい。すみません。

もちろんそんなことは言ってもらえなかった。でも、もっと嬉しいことを言ってくれた。

「君がやっていること、やろうとしていることは正しいし意味があることだよ。だから、焦って環境を変えようとする必要はない。やり続けていけば、自然と君の周りに環境ができるから。」

そう言っていただけて、すごくすっきりした気持ちになれた。

逃げていたんですよね。うまくフィットできないその環境から。そして、環境を変えれば解決できる、そんな考えがあったんでしょうね。そしてこの時期の自分は、自分がやっていることに自信がなかった。この「自信がない」ということがいろいろな行動の「つっかえ」になっていた。

「大丈夫」と言って応援してくれる方の存在が、ほんとうに励みになるんです。

いくら環境を変えたところで自分の本質は決して変えられない。もちろん、その環境に「合わせる」ことはある程度必要だとは思うけれど、環境に合わせて自分の大事な部分を変えていく必要はまったくない。自分の求める環境が準備されていることなんかない。甘えてはいけない。自分が求めている環境は自分で作っていかなければいけない。しっかり準備することでその環境が整っていく、そう思っている。

自分が大切だと思うことをこのまま続けていこう、と素直に思えるアドバイスをいただいた。

いま、自分のいる環境が大きく変わってきた中で、先輩のこの言葉をかみしめている。

少しずつではあるけれど、しっかり環境ができてきている。