書き上げてからも勝負

書道は、書き上げてからも勝負が続きます。

今日は朝から作品の裏打ち。
渡仏前にお渡しする作品たちの裏打ち作業が大詰めです。寒い朝の空気に包まれて、冷たい水をつかった作業。書き上げた作品を絶対に破ってはいけないという緊張感。このピリリとした作業が、好きです。

書道の作品は、和紙に書き上げたそのままだとペラペラなので飾れる状態ではありません。裏打ち・表具という工程を経て掛け軸や額に納まります。

裏打ちは表具職人さんにお願いすることも多いのですが、僕が自分で裏打ちをする方法は高校の書道部時代に習得しました。部費が充分になかったので職人にお願いせずに自分たちで裏打ち・表具をやっていたのです。

いろいろな方法があるとは思いますが、小杉的(栃木高校的)裏打ちの手順は

1、まず作品が書かれた和紙を平らな板にひろげます。霧吹きで水を含ませながらやわらかいハケで丁寧にひろげていきます。板と作品の間の気泡を取り除き、シワ一つない状態にします。このとき、書き上げてから最低でも2~3日乾かしたものでないといけません。湿らせたときに墨が滲んでしまうからです。仮に、十分乾かした作品であっても、湿らせた状態の作品を何度もハケでなでていると滲みます。

2、作品よりも一回り大きな厚紙に、水で溶いたうすーい糊をまんべんなくハケで塗ります。これはスピードが命。見た目はポカリスエットくらいのサラサラの糊なので、もたもた塗っていると最初に塗った場所が乾いてしまいます。

3、糊が塗られた厚紙を作品にピタリと貼り付けます。この作業は二人で行う必要があります。ノリが塗られた面を下にした状態の厚紙の四隅を二人でもち、一方からゆっくり作品に厚紙を貼っていきます。このとき、最初に厚紙を下した側から硬いハケで、中央から「八の字」を描くように空気を抜きながら、厚紙と作品をしっかり張り付けていきます。

4、厚紙の四辺に、1.5cmくらいの幅で糊を塗っていきます。このとき、厚紙の下にある作品に糊を塗った部分が被らないようにしないといけないので、厚紙は作品よりもタテヨコ5cmくらい大きいサイズが望ましいのです。

5、厚紙が張られた状態の作品を板からそーーーっとはがし、もう一枚の板に張り付けます。手順4で塗った糊でしっかり四辺を貼っていきます。

6、一日乾かせば裏打ちが完了します。四辺をまっすぐ切りそろえ、軸装・額装をする工程に進みます。

作業の中で大切なのは「丁寧さ」と「スピード」。

こんな工程を経て、さらに表具されたものがお客様の手元に作品として届きます。