「四季」
それぞれの襖に「樹、岳、空」を淡墨で書き、そこに枕草子・春夏秋冬の段をしたためました。
春は、
どっしりと構える樹に咲く櫻の花。
夏は、
しっとりした水辺の夏草にポッと灯る光。
秋は、
山のすそ野をはらはらと散る紅葉。
冬は、
きりりとした空気と、ふわっと舞う雪。
万葉仮名を遣って仕上げました。
たとえば
「春=葉流」、
「夏=南徒」、
「秋=安喜」、
「冬=風由」
といったように、言葉そのものの意味と、
音にあてた文字の趣を感じられるように。
もともとはそれぞれの季節を、
文字ではなく「絵」のような表現にするつもりでしたが、
窓の外の紅葉がそれはもう素晴らしくきれいで、
それを絵に描くのがどうしてもできなくて。
ちらりほらり散る葉っぱを見ながら考え付いたのが言葉を「散らす」ことでした。
絵を描くでも、文字を書くでもなく、
「言葉を描く」ようなイメージ。
そんな秋の景色・言葉に落ち着いてからは、
自然とほかの季節もイメージがまとまりました。
「自然の言葉を、自由に表現してほしい」と
一任してくださった依頼主に、心より感謝。