「火の鳥」

「火の鳥」(280×212cm)

先日の三代展での作品のひとつ。永遠の命を持つとされる火の鳥、不死鳥。作品の構想のきっかけとなったのはストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」。そして作品の実質的なモチーフとなっているのは手塚治虫の代表作「火の鳥」です。

人間の思うようにはいかないこと、でもそれは、自然界ではごく当たり前のこと。キャンバスをわざとずらして配置したのも、そういった、ある意味での「人間にとっての」不均衡感を表現したかったからです。人の手の付けようのない、自然の状態。いえ、本来ならば私たち人間も「自然」。

この作品の制作と前後して、大飯原発訴訟についての福井地裁の判決文を読みました。

以下、判決文の一部を引用します。

多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。
このコストの問題に関連して、国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。

また、被告は、原子力発電所の稼動が、CO2排出削減に資するもので、環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所で、ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染は、すさまじいものであって、福島原発事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を、原子力発電所の運転継続の根拠とすることは、甚だしい筋違いである。
(引用終わり)

人間がコントロールできない「力」への畏怖。そして、本当に「豊か」な暮らしを、私たちは見失ってはいないだろうか。